日本の原点≠守り、信者も獅子頭も増加
神道伊勢大神楽教 渋谷章氏(69)
今年(平成25年)で10周年を迎えた。
伊勢大神楽は、約600年前に、遠くて伊勢神宮に参詣できない各地の人に神札を配り
ながら祓いや祈願を行ったのが始まり。
渋谷社中は、関西など2府5県、約5万軒の信者宅を一軒一軒訪ねて祈願する「門付け」
を行い、獅子舞と曲芸で神徳を伝えている。
昭和20年、元神楽師の家に生まれ、幼いころから神楽に親しみを持っていた。ピアノ
の調律師になったが、26歳の時、テレビで神楽を見た途端に懐かしい気持ちがこみ上げ
てきた。
数日後には出演していた社中を訪ね、入門を決めた。
寸暇を惜しみ笛や太鼓などの練習に打ち込み、普通なら2、3年かけて覚える技術を
3カ月で修得した。そして昭和49年5月には大神楽の名跡の一つ、森本長 太夫を継承し、
家元になった。
![小豆島での渋谷教主](../img/pic_cyug001.jpg)
長年の心の支えになったのが俳優で芸能史研究家の故小沢昭一氏との出会いである。
昭和48年ごろ、雑誌の取材で10日間寝食を共にした。
最後に「いろんなことがあるけど頑張れ。志持ってしないと大成しない。『若獅子の旅立ち』
だ」と言われたのが心に残り、交流が始まった。小沢氏が関西を訪れた時には二人で会い、
そのたびに「伝統芸能は日本の原点だからよろしくお願いします」と頼まれた。
「偽物の神楽」との誹謗、中傷にさらされるなど多くの試練があったが、小沢氏の言葉を
支えに自らが信じる道を一筋に歩み続けた。
これまでに3万7千軒の信者を増やした。最初はゼロだった獅子頭も増えた。「40もの獅子
頭を持っている社中はうちだけ」と胸を張る。
42年間、第一線に立ち続けてきたが、将来を見据え、「あと数年で家元を譲る。交代となる
と信用度が問われるが、私がまだ元気のうちに譲りたい」という。
「(獅子舞でお祓いした)子供が大きくなった時に『かわいがってもらったな』と思い出して
もらえればうれしい。それが人とのつながり。神楽の笛も好き、獅子も好き、全てが魅力的。
次世代に伝えていきたい」
(中外日報社のご厚意により記事と写真を転載させていただきました)